beki雑記

オタクのライブレポ

2018年11月の読書  

 

いけやま。『マンガでわかる鉱物コレクターズ・マニュアル』

 

鉱物収拾が趣味である作者が鉱物の集め方や買い方、保存方法、きれいな写真の撮り方、処分の仕方などを漫画でわかりやすく解説した本。この本の魅力としてはあまり聞き慣れない鉱物収拾のイロハを短時間で学べることが挙げられる。おれはオタクなので鉱物収拾???と思いながら読み進めていたんだけど、同人誌の即売会のように鉱物即売会が毎月全国各地で行われているというのは目からウロコだったし(各即売会リストあり)、鉱物の写真もすごく綺麗で行ってみっかミネラルショー!?という気分にさせられた。あと主人公のハムスターがとにかくかわいい。

 

・にわみちよ『ナースになったらピュアな心がなくなりました。』

 

竹書房の本当にあった~系実録漫画作者の看護師時代の1年目の看護師あるある的なエピソードをコミカルに4コマで描いた作品。看護師がキツい仕事というのは知ってはいたが、ここまで大変なのか…と思わされた。基本的には看護師の日常を描いており話らしい話はないが、初めて受け持つがん患者の入院からお見送りまでを描いたエピソードは必見。その患者は入院後病状が回復しいったん退院するのだが、再度入院し医師から余命半年を告げられる。そのときのコマが見開き1ページを使った大ゴマや、ドラマのようなクローズアップではなく4コマの中の1コマなのだ。もちろん、4コマ漫画形式だからそうなるのは当たり前なのだが、おれはそんな1コマに人が当たり前のように死ぬ死と隣合わせの医療従事者のキツさを感じてしまった。肉体的な厳しさ以上に精神的な厳しさもあるため、燃え尽き症候群で辞める人間が多いと述べる作者の言葉はすごく実感を伴っており、最後のページでピュアな心と引き換えに看護師としてやっていく心を手に入れたというのは上手いタイトル回収だなと思った。惜しむらくは紙質がよくないところ、こういうところやっぱり竹書房だ。

 

・中村 文則『R帝国』

 

管理社会であるR帝国を舞台に野党幹部秘書の栗原と一般市民である矢崎の2人の主人公が他国からの侵略を受ける中でR帝国の異常性を知り抗っていく物語。読んで数ページでディストピアものか…と思ったんだけど、野党自体も与党から議席を1%分けられ (選挙は行われるが全議席を与党が獲得するため)一党独裁ではなく野党の存在する民主主義国家であることを国外にアピールするだけのヘゲモニー政党制的なものであるため、全く力がないという描写が序盤にあったのは印象的だった。またこの物語は、SNS映えする日常を世界に公表し幸せアピールに余念のない若者やスマートフォン依存症、国家における自己責任のそれぞれの意味、ネット世論の歪み方などさまざまな現代社会の問題に疑問を投げかけていてつい一気に読んでしまった。ただそこが魅力でもあるのだが、同時に少し冗長になりすぎているきらいがあり、もう少しテーマを絞った方が良かったのでは…?という気持ちを抱いた。個人的には加賀さんの笑い方がエロ同人の中年竿役っぽくて好きなのだが…

 

・治部れんげ『炎上しない企業情報発信 ジェンダーはビジネスの新教養である。

 

なぜ最近企業の広告が意図しない形でジェンダー関連で炎上するのか、またディズニー映画のプリンセスは時流を読み女性ウケする女性像を描いているのかを書いた本。

まず企業広告の炎上の分析だが、近年のルミネ、資生堂、キリン、サントリー宮城県ユニ・チャームがなぜ燃えたのか鋭く指摘している。例えばルミネや資生堂の炎上について作者は「働く女性への侮辱的な表現が問題となった」と指摘し、働く女性を男性上司が単なる「職場の華」と表現したことが炎上の起因になったと述べている。自分もこの動画を検索して、さすがにこれを企業広告として出すのは攻めすぎていないか?と震えてしまった。男性上司が部下の女性に「寝てそれ?」とメイクを揶揄するのは下手をしなくてもハラスメントとして取られかねないというのを広告をこの通したであろう企業の決裁権者が知らないのはこわい。また、午後の紅茶の炎上について作者は「顧客女性を見下す表現が問題となった」と指摘し、午後ティー女子と題し商品を飲む女性を揶揄したイラストを企業が発信したことが問題だと述べている。自分も当時この騒動をツイッターでみて、イラストの内容自体はよくバズる○○は××的なもので特に炎上するに至らないと思ったがこれを企業が顧客に発信するのは不味いだろう…と作者同様に思ってしまった。逆にサントリー宮城県のエロ表現、ワンオペ育児礼賛ともとられかねないユニ。・チャームと作者が指摘する広告については個人的には過剰反応だと思ってしまった。前者については確かに趣味がいいとは言えないが前述の広告のように顧客に対して悪意を持っているわけではないし(作者は「肉汁いっぱい出ました~」と女性に言わせるようなアダルトな描き方についてはゾーニングすべきだと指摘している)、後者についても育児をする母親について侮蔑的なニュアンスで描いていないためそこまで問題視するのは違うだろうな…と感じた。以上の炎上の理由として、想像力の欠如、組織の女性率の低さ、そして何より前述の広告はすべてインターネットCMであるためテレビCMのような厳格なスクリーニングがされておらず、失敗するケースが多いと指摘しているのはなるほどなと思った。

次にディズニープリンセス映画がなぜ炎上せず女性ウケするのかというのは普段ディズニー映画をみないおれにとってすごく面白かった。個人的にはディズニーランドに行くたびにステレオタイプな恋愛や結婚を重視するお姫様像の物語が多いと感じていたのだが、それは昔の話で近年は自立したヒロインが恋愛よりも家族や仕事を重視する物語にシフトしているとのことで、アナ雪をありのままの歌でしか知らなかった自分にとっては少し衝撃を受けた。女性の意識の変化を的確につかみつつも進歩的になりすぎないというのは絶妙なバランス感覚であり、ディズニー英国法人が発表した現代のプリンセス・ルール(※1)は確かに時代に合っていると感じさせられた。そしてこの本のポイントの高い点としてHUGっとプリキュアを例示し、「男の子だってプリンセスになれる!」にも言及しているところだろう。のらきゃっとちゃんはビロードのうさぎだからこそかわいいなんて言わせない。

 

・『ライブに行こう!―東京ライブ・スポット・ガイド』

 

ジャズやアコースティック、ロックなど様々なジャンルで使われる都内のライブスポットを紹介した本。この本の特徴として、キャパの比較的大きなところ(COAST)等は載ってないことが多く、キャパ50未満のどちらかというとライブが見れるバーや居酒屋などの紹介が中心で勉強になった。ライブハウスの簡単な紹介とともに最近の出演バンドが載っているんだけども、2009年出版の本だけあって、Lamamaは銀杏ボーイズ、サンボマスター原爆オナニーズオナニーマシーンが並んでいたのはちょっと笑ったし、clubasiaは鈴木あみと中井ヤスタカが並んでいたのは時代を感じさせた。また、Queが載っていて嬉しかった反面フーバーオーバーも書いて欲しかったなと当時行っていたおれからすると物足りなくなった。もしこの本が現在発行されていたら、最近の出演バンドには地下アイドルがずらっと並ぶんだろうか。

 

 

※1

現代版「ディズニープリンセスの10カ条」って?

https://www.cosmopolitan.com/jp/entertainment/entertainment-news/news/a3560/disney-project-redefines-princesses-girls/